毎年正月には千葉の実家から父母が手造りのおせち料理を送ってくれる。今風の鮮やかな色合いの物ではなく、地味ななりをした昆布巻きや田作り、キントン、煮しめ等なのだが、これが驚く程早く痛む。普段スーパーの総菜で馴れてるので、冷蔵庫に入れておけば冬場は1〜2週間平気で持つ…と、そんな感覚で放置してしまうとアッという間に父母の優しさをゴミ箱に突っ込む事になってしまう。

近頃は「食堂」と名のつく店でも、そんなスーパーの総菜と変わらぬ添加物まみれの食品を出すとこが少なくない。かつ丼と言えば、豚肉に衣つけて揚げてタマネギと割り下で煮て卵でとじ、ほかほかご飯にドシャッ!そんなこと食いしん坊なら誰でも知ってる。でも、スーパーの総菜やコンビニ弁当だとそこに合成着色料、発色剤、着香料、酸味料、甘味料、合成調味料、合成保存料、酸化防止剤、防カビ剤、防腐剤 etc が入り、さらに手が込んだ店だと柔らかい成形肉を作る為にリン酸塩、増粘剤、ph調整剤、たんぱく加水分解物 etc が…そこまでするのは、やはりコストを下げるため!コストを下げる為には、売り場に丸一日置いてあり閉店間際に半額になったのを買ってったお客さんが翌日夜に食べても、変なニオイがしないこと!変な味じゃないこと!変な色じゃないこと!とりあえず、ニオイと味と色が変じゃなければお腹がくだっても…ねえ?

で、『大丸食堂』ここは大丈夫、不器用で実直な大衆食堂らしい大衆食堂。以前は交通量が多かったであろう国道の旧道にある古びたドライブインで広い座敷が二間ある、厨房前の壁にはズラリとメニューが並び、そこで注文してしまうスタイル…会計は先でも後でも良い。ボクがこの店でよく頼むのが、いか焼き定食(750円)。

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最初この店でラーメンか何かをすすってる時にナナメ後ろのオジサンが、これを頼んでたの「はい、いか焼き定食おまちど〜」っていうおばちゃんの声が聞こえて「えっ?」て思ってチラリと覗いたら、この淡白なルックス…定食屋の定番といえば揚げ物や炒め物…そこに、この白いイカと白いドンブリ飯という一種異様な“禅”すら思わせる世界観!しかも、揚げ物定食とかに比べて安いわけではない…ていうか、このいか焼き定食「750円」とシレッと書いたけど、実際表記されてるのは「750円〜850円」なのよ!この…多分、大きさによって仕入れ値が変動するって事なのかな?850円出して…どうなの?いか食いたい?って、そこに惹かれるじゃないですか。

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まあ、でも美味しいんですよ。一夜干しなので塩気があって、見た目のインパクトほど淡白ではなく意外とドンブリ飯のパートナーをそつなくこなしてます。そして、このたっぷりのマヨネーズがいいんだ!マヨネーズが無いと多分いか一匹全部は厳しいかも…醤油でひと口、マヨでひと口、生姜醤油、生姜マヨ、紅生姜マヨ…ちょっとずつ味を変えて楽しめる。いかも意外に部位によって食感がちがう…ゲソとミミはわかりやすいけど、胴体も薄いところ厚いとこで香ばしさやモッチリ感の差を楽しめる。

小鉢のタラコとしらたき煮、青菜漬け、味噌汁の具…どれも業務スーパーのなんか使ってない、ちゃんと手造り。チェーンのファストフードや安価の総菜弁当と闘う為に、漬物や小鉢を業務スーパーのもので補ってる飲食店あるけど、あれ悲しいね…わかるもんな。

ちゃんと手造りの美味しいものを出して、従業員みんな食べていけて…ってなると、やはり定食類は700円台になってしまう。それで、しょうがない…ていうか、それが普通。

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でもボク達は今、普通じゃない世界を生きてるのだ。