去年のちょうど今頃、無職になり時間が出来たので市の健康診断に行ってみた。当然のようにメタボうんぬんで引っかかり、生活習慣改善の問診を受けないと帰らせてくれないという流れに…メタボなんとかアドバイザーという妙齢の女性は、マスカラは目元にくっつき口紅は歯にくっつき「朝早くからお仕事ご苦労様です」といった様子の方だったが、なんだか「タバコやめれませんか?」とか「毎食野菜料理一品プラスしてもらえませんか?」など、とにかく乱暴で辟易してしまった。

どうにかこうにか、なんとかアドバイザーの攻撃をかわし解放されたのは10時頃、当然朝から何も食べてないので空腹だった。前晩から降り続いてる雪は勢いを増し、町は真っ白…昼食にはまだ早いのでチェーン店の牛丼でも食べるしかないかと判ってはいたが、なんとなくそんな気になれず大通りの方でなく住宅街の細道をクネクネと入って行った。見知らぬ道の袋小路で2度行き止まり古びた団地が並ぶ通りに出た、大きな団地の一階部分は商店が並んでいたようだが、今は営業してる店は無いようだ…降りしきる雪のせいもあり人気なくひっそりして見えた。そんな団地の近くに見た事ない食堂があった。昔ながらの雰囲気ある食堂…惹かれはしたが、駐車場が見当たらないのと店先にいたお店の方らしきばあちゃんにジロリと一瞥されたのに気圧されて、思わず通り過ぎてしまった。

一度道をそれると、ある意味迷子になってたような状態だったので、後戻りする気にはなれずそのままどうにか大通りに抜け、結局その日は…何を食べたか覚えていない。それから何度か近くを通りがかった時に「あの店、何だったんだろう?」と探してみたが、不思議と見つけられずにいた。大雪の日に見たまぼろし…そんな風にさえ思っていた。

で、ついこないだ…大雪の時に、あの時と同じように空腹で近くをクルマで走っていて「あっ」と思ったわけですよ、「もしかして、この雪道ならあの店に連れてってくれるかもしれない!」って…住宅街に入り、クネクネ曲がって団地があって…うわっ、あった!

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のれんが出てるから営業中にちがいない!今度は落ち着いて駐車スペースにクルマを停め店に入る……店内はやはり歴史を感じる昭和な佇まい。客の気配を察して奥からじいちゃんとばあちゃんが出て来た。じいちゃんはテレビをつけ客席に座り、ばあちゃんは厨房へ入った。ボクは立ったまま壁に並ぶお品書きを眺める…そば、うどん、丼物…とんかつ定食1000円か、気合い入ってるな…ラーメン関係の中にお店の名前を使ったメニューがある、じいちゃんに「久高ラーメンてどんなのですか?」と質問すると「お揚げが入っててな…」と、あまり聞き取れなかったがそれを注文した。ポジション的に、ばあちゃんが作る係でじいちゃんはおしゃべり担当かなと思ったが、結局店を出るまでじいちゃんはテレビを凝視していて話しかけてはこなかった。

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久高ラーメン(700円)…お揚げには餅が入っており、つまり餅巾着だった。和風ダシのスープに色んな野菜…良い言い方ではないかもしれないが、前日の鍋の残りで作ったラーメンといった感じ。しょっぱめのスープもそんな雰囲気だった。昭和な佇まいながら整然と片付いた店内とテレビで流れる朝ドラの再放送を交互に眺めながら、こんな家庭的なラーメンを食べているとなんとも懐かしい気持ちになり、一年越しでこの店に入れて本当に良かったと満足感に浸れた。

やっと店名を把握したので、帰宅後ネット検索してみたら普通に口コミサイトに情報があってズコッとなった…全然「大雪の日に見たまぼろし」では無かったが、いいのだ…今冬中にもう一度訪れ、ノーマルの中華そばか気合いの入ったとんかつか…いやいや、板そばも気になるな…あの店で手打ちしてるのかしら?とにかくまた行かなければ!