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21歳でやっと実家から出て行ける!という時に父から手紙をもらった「君が選んだ道が正しいかどうかはわからないが、がんばりなさい」と書いてあった。煮え切らない嫌な文章だと思った。息子の門出に「正しいかどうかわからない」なんて、自分の管理下に置けなかったことがそんなに悔しいのか?と恨むような気持ちで家を出た。

物心ついた時から両親が好きではなかった。無関心なのにたまに口を開けば否定ばかりする父も、いつも見張ってるような母も疎ましかった。「理解しあえた瞬間があったわけでもないのに、物知り顔でボクの人生をコントロールしたがりやがって」そんな風に思っていた。

でも、娘が産まれて色々わかってしまった…子供は忘れてしまっているけど、この世に生を受けた瞬間から人はひとりで歩き回れるわけはなく、親(ないし周囲にいる誰かが)が自分の身体の一部のように幼子を守り、抱きしめ、食事を与え、尻を拭き、泣き顔を笑顔へと代えてくれていたのだと。

娘が産まれた数日後、病院に向かうクルマの中で突然ボクは…まるでドラマチックな映画の主人公のように、記憶から失われていた過去(自分は両親に愛され、育てられてきたのだ)ということに気づいてしまい、クルマを路肩に停め少し泣いた。泣いたっていうか、鼻の奥がツーンとした的な…テイッシュで鼻をかむと小さなカメムシが出てきた、そのカメムシが後の娘である。どうもありがとうございました。

まあしかし、そんなこんなで突然親孝行人間になったりするわけでもなく…だけど、普通に父と二人で娘の手を取り歩いたりできるようにはなった。今は父がどんな気持ちであの手紙を書いたのか、少しはわかる気がする…自分の分身が自分の知らない世界へと旅立ってしまう不安から「正しいかどうかわからない」と綴ったのだろう。父には悪いが、本当にわからなかったんだ…自分があなたたちの分身だったなんて