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ボクが子供の頃は、太平洋戦争を題材にした映画の上映会が学校の体育館や公民館で結構頻繁にあり、どこの図書館にも漫画といえば『はだしのゲン』 て感じで並んでいて…ちょうど戦後20年過ぎた頃で、高度成長期と好景気に煽られ「どんどん近代化する社会に対する違和感を感じてる戦中戦後派の焦り」みたいのもあったと思うんだけど、両親も教師も積極的にそういう…戦争映画を見せたがっていた気がする。

大嫌いだった。とにかく「あの悲惨だった戦争を繰り返さない」ことだけを主眼に作られた作品たちは、悲惨さや悲しさ・気持ち悪さや怖さを前面に押し出した“地獄絵図”のような内容で、観てしまった後は何日も悪夢にうなされたりした。

漫画家こうの史代さんが『夕凪の街 桜の国』を経て描いた『この世界の片隅に』を読んだ時、そして“THE BEST MANGA 2010第1位”“文化庁メディア芸術祭優秀賞”“最高の本!2010グランプリ”と立て続けに賞を獲った時、ついに現れた!とホントに心の底から嬉しかった。やっと、怒りや悲しみで思考停止してしまうような「反戦ありき」ではない(だけど多くの人の心を捉える)戦争漫画が現れてくれた!と…できることなら、10年後20年後の小学校の図書館には『はだしのゲン』ではなく、『この世界の片隅に』が並んでいてくれないかと!そんなことすら望んでしまうくらいに。

で、今月『この世界の片隅に』のアニメ映画が公開された。『この世界の片隅に』を心から愛する監督が、ただでさえ参照資料の多いこの作品の、さらに裏付けや具体的な舞台の特定に長い時間をかけ、30回以上広島・呉に足を運び…日々の暮らしに、飛び交う戦闘機にリアリティを求め…追求して追求して作り上げた作品。どこまでもマニアックで、それでいてポピュラーに仕上がっている。漫画同様、多くの人に受け入れられる作品として成功を収めるであろう。まあ、個人的な希望としては成功うんぬんより、終戦記念日付近になると繰り返し放送されるアニメ映画が『火垂るの墓』でなく、『この世界の片隅に』になってくれたらどんなにか!と思ってしまう。

最後に、アニメ版『この世界の片隅に』の感想を書かせていただくと…「良くも悪くも監督が作品を愛しすぎてる作品!」と思いました。愛してるからこそ妥協を許さず深く描かれている反面、愛してるからこそどのエピソードも捨てきれずトゥーマッチな構成になってしまってる印象。アニメ版を観て改めて、自分が漫画版を大好きだったことに気づかされもしました。自分と同い年の、同じように残酷な戦争映画が好きではなかったこうのさんが綴った、戦時中なのに“社会”でなく“世界”の視点から人間の生活を描いた漫画…「自分の娘にも読んでもらいたい」と思える素晴らしい作品だ。