2010/11/19
朝7時起床、定時出勤。午前中、ジュンからメールがあり無事本日中の退院が決まった。うおっふと思い、会社に早退願いを出す…どうにか15時までに仕事を終え、ジュンを迎えに…自宅から病院まで1時間ジャストくらい、今までで一番早く着いてしまった。病室ではやはり、おばちゃん達が喜んでくれつつも別れを悲しんでくれた。2週間分のジュンの荷物を抱え、二人で皆に頭を下げ病院を後にする…もう暗くなった街の冷たい空気を大きく吸い込み、ジュンが「ああ~娑婆の空気だ!」と満面の笑みで言う。まだこの後、手術で切り取った患部の内容如何では追加治療の可能性も有り得るので、両手放しでバンザイするわけにはいかないが、それでも何か一区切りという…ハッキリとした分岐点をそこで感じた。この隣県の病院に転院するかどうか悩んでる時から、心配してた通院・手術・面会…そして生活、どうにか力を合わせ乗り切る事ができたのだ。「おつかれさま」とジュンに、そして「がんばってくれて、ありがとう」という気持ちで一杯だった。

というわけで、子宮頚部摘出術(トラケレクトミー)の治療入院として我々の知るうち(色んな方のブログや本の体験談を読んだ限り)では最短の12日間という日数で、無事退院となりました。声をあげ我々に関わってくれた多くの友人・知人、我々のブログやtwitterを目にしハラハラドキドキしてくれた皆様にも「おつかれさま」と言いたい。ありがとうございました。

この急展開の退院については、twitterでつぶやいたりせず帰宅後『晩酌TV』でジャジャーン!て…まあ、早い時間だったので「ジャジャーン!…あれ?」って感じではあったけど、とにかくサプライズでの復活を遂げ、しかし何時間も配信できる程の体力もないので、早めに切り上げ、久々の自宅ベッドを満喫させたのでした。

2010/11/20
休日。ゼニも含めて家族3人1日中寝室で過ごした。思った以上にジュンは何も出来ない(というか、とにかく安静にしてなくてはいけない)ので、食事の用意から「トイレ行って来たら?」とか「もう1枚着たら?」とか、早く退院してきたなりの世話が大変であったが、こうして家にいてくれるだけで嬉しいので苦にはならない。隣県まで面会に行くのも、もうしばらく勘弁して欲しい…

退院前日の食事指導で説明されるまで詳しくは知らなかったんだけど、開腹手術の後は意外と食事制限が多い。今まで何十年とかかって安定してたポジションにいた内臓達を動かすのだから、当たり前といえば当たり前なのだが、特に長い腸は脂や繊維質を多くとり過ぎると腸閉塞をおこしやすいので、野菜全般から海草、消化に悪いコンニャク類や腹が膨れる炭酸飲料、揚げ物はもちろん肉も「なるべく、ささみなど脂の少ない部位を…」との事であった。意外だったのは、アルコール類で退院しても一ヶ月くらいは控えるよう言われるかと思いきや「特に制限はないですが、飲み過ぎないように」と、しかも「少量でしたら、内臓の働きを促進させるので、もしろウエルカム」みたいな事すら言われ、夫婦して驚いた。

とりあえず、退院初日はうどんやおでん、夜は脂少なめの刺身類なんかを食べながら『晩酌TV』を、昨夜に引き続き“病み上がりなので早寝バージョン”でお送りした。

2010/11/21
休日。意外と緊張感のある自宅療養生活…いきなり強い痛みを感じて、痛み止めの薬を飲んだり、腹筋使えないので気張れずうんこが出なくて腹が張るとアチコチ痛くなるってんで、肛門付近をマッサージしてやったり…その合間に、メシを作り、洗い物して、洗濯干して、掃除機かけて。夜は、具を柔らかく煮たブイヤベースを作ってあげたら、たいそう喜んで食べてくれた。たくさん食べて早く元気になって欲しいが、満腹は絶対厳禁なので微妙なとこ…「いっぱい食べちゃダメ」と言われると食べたくなり、「食べていいよ」と言われると食べなくなるという“天の邪鬼”を持ってるジュンは、普段絶対食べないようなものにまで思いを馳せ「ああ、腹いっぱい食いまくりたい…」と一日中ボヤいる。

風呂にもまだザブンとは入れないので、湯舟で四つん這いになり腕と足だけ湯につかり、背中からボクが湯をザバーザバーとかけてやっている。「風呂に入るぞ」と言っても、湯に浸かれないからか憮然としてるが、「河童浴だぞ、背中の甲羅に湯かけてやるぞ」と言うとキャッキャと喜びながら浴室に来る。入浴後も身体を冷やしちゃいけないので、風呂る前に洗面所と寝室の暖房をつけ、とにかく家中アチコチ暖かくせねばならない事も大変だ。大変だけど、こうして家で世話できる方が嬉しい。

2010/11/22
朝7時起床、定時出勤定時退勤。ボクが会社に行ってる間のジュンの食事にと、煮魚とタイ風おかゆのスープを作っておいた。夕飯は、スーパーで買ったちらし寿司。元々、夫婦して“お菓子”とか“デザート”とは無縁の生活だったが、退院後のジュンの食事制限の余波からか随分食べるようになった。特に、せんべいは何種類か食べてるうちに人気銘柄の理由などが理解できたりして楽しかった。あと、せんべいの品揃えもスーパーによって随分違うのね…今までは、どこも似たような棚構成なのだろうとしか思ってなかったが、意外にせんべい愛のある棚、ない棚が明確にわかるものなのだなと…いや、おもしろい。

2010/11/23
朝7時起床、定時出勤定時退勤。今日はせこなおさんからジュンへの贈り物が届いた。本職のぬいぐるみ作家であるせこなおさんが、オリジナルで作ってくれた“おかあやんカッパ”のぬいぐるみ!素晴らしかった。もちろん『品物』としても「うれしい」だし「ありがとう」だけど、何かこういう…ホントに「病気の友達に自分が何できるだろう?」ってとこを考えに考えてくれたんだな…っていうのが、凄く伝わってきて「一緒に戦ってくれたんだな」と思えて嬉しい。

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やはり、大きな病気になった人と向き合うのって簡単な事じゃないと思う。でも、腹を決めて本気で突き詰めれば、お医者さんでも与える事のできない“病を忘れられる一瞬”を作り出す事ができる…と、ボクは感じている。苦し紛れの「がんばってね」や、無責任な「きっと大丈夫」という言葉の先の『ツライ思いしてる人に対して、何も言ってあげられる事、やってあげられる事なんて無い』の、さらにズーーーッと奥に、ソレはあって、そしてソレは患者に伝わるもののような気がする。友達はおろか、家族でさえ逃げてしまう事の少なくない“大きな病気になった人と向き合う”をしてくれた友達の事を、ジュンは絶対に忘れちゃいけないと思うし、ボクも絶対に忘れずにいようと思う。

昨日からジュンが「子宮に違和感が…チクチク痛む」と言ってるのが、気になる。再入院という文字が頭をよぎり、夫婦して震えて寝る。